AIは音楽制作の時代を変えるのか
近年AI技術の飛躍的な進化が進み、chatgptやMidjournyなどさまざまな生成AIがより身近になってきています。中でも注目すべきは、音楽制作の分野であり、作曲、編曲、録音などの過程を根本から変革しようとしています。AIが人間の創作活動を支援し、新たな制作のカタチが生まれていくのか、それともAIが作曲〜音楽の消費行動そのものがAIに支配されていくのか。そんなことを考察してみました。
後半で実際の画面と作ってみた音楽を共有したいと思います。
Suno AIってなんなの?
アメリカのマサチューセッツ州のSuno, Inc.で開発され、2023年にリリースされた音楽の生成AIです。
作詞、ビートメイク、ボーカル音声などゼロからプロンプトで制作していくツールで、雰囲気やシチュエーション、ジャンルを伝えるだけで30秒〜1分ほどの楽曲が、ものの数十秒で生成されます。
1から音楽を作る苦悩は一度でもDTMを触ったことがあればわかるはずですが、最初に試したときは衝撃が走りました。汗
Suno AIの特長
Suno AIの音楽生成AIは、次のような革新的な特長を持っています。
多数のジャンルに対応できる
ロック、ポップス、クラシック、ヒップホップ、ジャズ、世界音楽など、あらゆるジャンルの音楽をAIが生成することが可能です。既存の膨大な音源データからスタイルを機械学習し、そのジャンルに準拠した新しいオリジナル楽曲を作り出します。
楽器シミュレーターの精度が高い
ギター、ドラム、ピアノ、弦楽器、打楽器、管楽器など、実在の楽器の音を非常に高い精度で模擬することができます。人工的な音にはならず、まるで生演奏されたかのような自然な音作りが可能なのです。
対話式の作曲スタイル
Chatgptなどと近いですが、作曲の過程でAIと対話しながら、メロディーやコード進行、リズムパターン、伴奏の編曲、音色の選択などを具体的に指示することができます。AIは人間の意図を的確に理解し、その指示に基づいて熟練のミュージシャンさながらに作曲を行います。
既存スタイルの継承と融合
気に入った楽曲や特定のアーティスト、バンドのスタイルを継承して、新しい楽曲を生成することも可能です。さらに複数のスタイルを融合させ、それまでにない斬新なジャンルを生み出すこともできるかもしれないです。
ただし、当たり外れが大きい
ヒップホップで指示をしたのに、EDMのようなビートになって出てくる場合や、歌詞を入力しても、歌が入らない場合などまだまだ精度にブレはあります。
実際に使ってみた
1曲目:夜中にチルできるヒップホップを生成してみた
ちょうど執筆が夜だったので作業が捗るように夜に合う曲を作ります。
コード進行
Ⅵ- I -Ⅴ-Ⅰ
一般にVI-I進行は好ましくないコード進行です。(役割が一緒なので。。。)
歌詞
若干流れが不可解ですが、なんとなく夢を追う眠れない主人公が勇気を出し踏み出す感じ????ですかね。
2曲目:Chatgptと組み合わせて女性バンド曲を生成してみた
歌詞
chatgptに女性バンドの恋の歌を作詞してもらいました。
少し展開を加えるためBメロも組み込みました。
[Verse 1]
君が笑うたび、心が躍るの。
言葉にできないこの気持ち、
君には届かない、風に消えてゆく。
でも、君のそばにいるだけで、私は強くなれる。
[Pre-Chorus]
知らぬ間に溢れる想い、
隠せない、この心の音。
君にだけは聞こえていない、
切ないメロディ。
[Chorus]
この想いよ届け、
一方的なこの恋の歌を。
君への愛だけが私の道しるべ、
どんなに遠くても、君を想うだけで、
世界が輝いて見えるの。
“一方的な”など言葉は気になりますがこのまま行きます。
できたのが下記です。AメロからBメロ、サビの展開は作れていますね!
少しプロンプトを修正すると歌詞が謎の言語に。。。
そして最終的にT.M.Revolutionの西川貴教さんのような声のミドルテンポの楽曲が完成しました。
楽曲制作者/消費者双方の視点から見てみる
AIが完全に人間の心に響く楽曲制作ができるかと問われると筆者はNoだと思います。”心に響く=ストーリーがに共感すること”だと思っていて、全く同じ歌詞やメロディーでも作曲した人が今まで影響を受け、蓄積されてきた感覚や、作曲時の背景、伝えたいことなどによって共感できるかできないか、共感の深さは変わってくると思います。
メリット・可能性
制作活動にアイデアを吹き込む
メロディやコード進行などAIが生成したものを聞いていくと似たようなものが多いものの、中にはかなり独創的なアイデアも含まれるためある意味作曲者の思考の幅を広げる補助ツールになりえます。
リアルタイム性
これだけのスピードで楽曲が生成できるのであれば、例えばラジオのBGMなどその時の話題に合わせて音楽の速さや雰囲気を変えることができるようになる可能性があります。これによってより人々のライブストリーミングの没入感を高めるかもしれません。ライブコマースなどとも相性がいいかもしれませんね。
パーソナライズ性
個人の気分やシチュエーションに応じて最適な音楽体験を提供できるようになる可能性があります。音楽と消費行動の研究は1990年代から行われており、いくつかの論文では従業員と消費者が積極的に関わる店舗などの場合、テンポが早い楽曲を流していた方が友好的な消費者反応につながる可能性なども示唆されています。パーソナライズされることにより、マーケティングへの活用という視点でも期待できるポイントも多いです。
デメリット・課題
音楽の価値が希薄化する
当然ながら数が増えれば相対価値は下がります。ネット黎明期がそうであったように情報の民主化が進めば流通する情報量が増え、今では誰が発信しているか、情報に付加価値をつけて発信できるかが重要な時代になっています。つまり音楽でも制作のストーリーや作曲者の人となりなどがより重要になってくるのではないかと思います。なぜ表現しているのか、どのように作っているのかなどのストーリーがあることがその音楽の価値になるのではと思います。
著作権にまつわる問題
AIによって作られた音楽は権利帰属の整理が非常に難しいです。大量の作品を学習して制作しているという既存の楽曲との関係性という側面と、AIが作った楽曲自体の著作権帰属に関する側面があります。広がっていくためには法律の解釈の明確化や改正が必要になると思います。
Suno AIの利用方法
基本的に無料で使用できますが、課金プランもあります。
プラン | Basic Plan | Pro Plan | Premier Plan |
料金 | $0(無料) | $10 / 月 | $30 / 月 |
クレジット | 50 credit / 日(10曲) | 2,500 credit / 日(500曲) | 10,000 credit / 日(2,000曲) |
商用利用 | 不可 | 可 | 可 |
チャージ | 不可 | 可 | 可 |
優先生成 | なし | あり | あり |
同時実行ジョブ | 2個 | 10個 | 10個 |
下記リンクから右上のMake a songボタンをクリックすると無料のクレジットが発行され楽曲を作ることができます。
まとめ
Suno AIはこのように、プロ・アマ問わず、音楽制作において新たな表現の地平を切り拓く可能性を秘めています。AIとのユニークな対話により創作がなされるため、全く新しいタイプの独創的で斬新な楽曲が次々と生み出されていくことでしょう。
一方で、AIの台頭が人間の音楽創作を脅かすのではないかという懸念の声もあります。しかし、Suno AIの考え方は、人間の創造性を助け、さらに高めることにあります。AI生成楽曲を人間がさらにアレンジする、あるいはAIからの示唆を得て人間が新たな構想を立てるなど、AIと人間が協働して作品を創り上げるスタイルが生まれてくると思います。
精度が高くなれば、マーケティングへの活用も視野に入ってくるだろうと思います。
Suno AIが切り拓く音楽制作の新たなあり方は、人間の創造性をも刺激し、より豊かな音楽文化の発展につながっていくことが期待されています。音楽の未来を変える可能性を秘めたSuno AIの動向から、目が離せなくなりそうです。